コロナ後遺症症状と視点
コロナ後遺症治療概略
1)それぞれの患者さんで症状の組み合わせが異なり、定型的な治療はありません。
2)治療経過でも、それぞれの患者さんにより経過が違っており、その時の症状や診察の状況によって治療を決める必要がある。
3)試行錯誤しながら臨床治療をしてきたことから考えられることを記載しています。
4)現状では患者さんの個体差や経過が違うことから漢方処方を記載する状態には来ていない。
漢方処方を公開しても良いと思う反面…漢方診断が出来ない医師が殆どなことに危惧します。
5)中国で作られたコロナウィルス感染症の治療薬:清肺敗毒湯は身体中の悪血(充血)を取り除き、熱を中和していた水分を駆逐する漢方薬です。このことからもコロナウィルス感染症での臓器の鬱血は強く残ることが多いと考えられる。
症状別視点
1)倦怠感:一般的な風邪の後遺症と同じで胸脇苦満と胃熱が殆どで、腸は虚血傾向で肺は熱を帯びている状態でもあることが多い。この症状は一般の風邪の熱の遷延や怠さの遷延の漢方治療をしていけば経過は良好になる。比較的治療は容易だが経過が長いと治療期間も長い傾向になる。
2)胸痛・胸部違和感・動悸:胃熱が原因のことが多く治療は容易であることが多い。胃熱がある胃炎での胸痛や動悸と同じ様な漢方治療をしていくことになる。
3)咳痰:胸脇苦満と胃熱に加え腸熱も加わっていることが多い。気管支喘息の漢方治療に似ていて治療は容易であることが多い。
4)脱毛:左下腹部の力が落ちており虚血がある。加えて胸脇苦満や胃熱のどちらかがあることが殆ど。経過に従って漢方治療していれば治療は難しくないが治療期間は長いことが多い。
5)嗅覚障害:胸脇苦満と胃熱があり、咳痰と同じ様な身体であるものの症状が異なっていて個体差の様に思われる。花粉症の漢方治療と似ていて一般薬と漢方薬との併用治療で症状が徐々に改善して行き治療自体は難しくないことが多いが治療期間は比較的長い。面白いことに匂いに対しての治癒過程は一つずつ治って行く。
6)味覚障害:充血の臓器は個体差が多いが胃腸が弱く胃熱があることが多い。亜鉛入りの胃薬と共に漢方治療をすることが多い(現在では亜鉛が不足していないことが多いことから亜鉛剤の胃薬は使っていません)。胃腸が弱いことが多いことから、漢方治療中に下痢することが多く少し治療が難しいが、時間と共に徐々に改善することが多い。
7)上肢の痺れ:左右差は両脇である胸脇苦満(右)や胃熱(左)の充血と表症が連動していることが多い。漢方治療の原則に従って治療していれば徐々に改善する。
8)上下肢先端のしびれ:季肋部に熱を持ち気の流れの停滞により起こす症状であると思われ、コロナ後遺症の一般的治療をしていけば治癒すると考えられる。
漢方医学的視点
ネットにて色々なコロナ後遺症の漢方処方を見ると…虚血ばかりに注目し補剤の記述が多い。一方で、充血を取る視点がないのを疑問に感じています。漢方医学的な視点としては、身体に「陰(寒)」が生じるには、それと相対性を維持する「陽(熱)」があるはず。漢方医学は陰陽観(寒と熱など)が基盤にあります。陰陽は「相対性」でもあり、別の表現では「シーソーの様な関係」にあることを念頭に置き治療することが重要だと思われる。この観点は漢方医学の視点がマクロ的なことからであり「寒熱という現象は相対性運動(陰陽観)により臓器同士がバランスを取っていること」を念頭に置く必要性があると感じている。
まとめ
1)漢方治療においては、臓器の充血や虚血を主眼においている治療であるため一般医療も併用するものの漢方医療の視点を併用すれば治癒していくことが多いと思われる。
2)コロナ後遺症の適切な医療をすれば怖がる病態ではないと考えられる。
3)治癒可能な病態だが治療が長くなることもあり、患者さんも治療を諦めない姿勢が必要。
2022/11/30更新
2021/10/12更新
2021/10/10更新
すぎ内科クリニック
院長:杉