加味帰脾湯加味帰脾湯の解釈

1.コロナ後遺症概略

概略簡略機序

2,コロナ後遺症症例

3.後遺症症状と視点

病態解析 | 漢方治療

補中益気湯 | 麦門冬湯
加味帰脾湯 | 四逆散
当帰芍薬散 | 柴苓湯(構築中)

4.免疫への視点

免疫肺炎機序 | 空間安定性

5.For Foreign MD

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6.マスメディアの方に

加味帰脾湯の解釈

コロナ後遺症で加味帰脾湯を使われている医療関係者も多くいます。
この処方は柴胡剤ですが、それを意識して使われているのか?疑問が残ります。
このことを目的に記事にします。

1)世の中の流れと柴胡剤
当院の開院当初は柴胡剤である加味帰脾湯を多く使っていました。1包が2.5グラムですが月に5キロ程度は使ったいた時がありました。そのときは時代が平和で胸脇苦満がある患者さんが多かったのだと思います。柴胡剤時代が平和の時に多く使われる処方だと感じられる一方で、今はストレスフルの世の中の様で黄連剤の適応の患者さんが殆どです。

2)コロナ後遺症と加味帰脾湯
コロナ後遺症の主病変は肝臓や脾臓の鬱血にあり、漢方的な表現では胸脇苦満と胃熱がある患者さんが多いです。この状態の身体に柴胡剤単体でコロナ後遺症が治るとは残念ながら思えません。

柴胡と黄連は相対性(バランス)を維持しており、両脇の熱があり柴胡と黄連の両方の薬草が必要な患者さんに柴胡剤の加味帰脾湯を使えば黄連剤適応の胃熱が強くなります。これを考えて見るとき柴胡剤と黄連剤の違いを意識して投与しているのか? 甚だ疑問が残ります。

3)加味帰脾湯の解析
加味帰脾湯の適応になる身体は…
肝臓のうっ血が見られる一方で腹部の力や下腹部の力が低下しています。加えて山梔子が入っていることからお腹を温め肝臓のうっ血をとっても、山梔子が入れ上昇を防ぎ、精神的な異常の出現をなくそうとしいるものと思われます。

加味帰脾湯は以下の薬草構成になります。
黄耆・蒼朮・酸棗仁・人参・茯苓・竜眼肉・柴胡各3;当帰・大棗・遠志・牡丹皮・梔子各2;乾生姜1.5;木香・甘草各2

この薬草の構成からすれば、血熱を取る薬草は柴胡・牡丹皮・山梔子の3つです。右下腹部・肝臓・心臓あたりの熱があると思われます。血熱を増やし温める薬草は黄耆・人参・当帰で表虚や腸の虚弱、左下腹部の冷えが認められることになります。人参に加えて栄養を立ち上げる竜眼肉を加えることで体力を上げることを意識している様です。この処方の特徴は腸や泌尿生殖器の冷えがあり、それを温める時に出現するであろう肝臓のうっ血や心臓当たりの鬱血を取る目的があるようです。気剤は蒼朮・大棗・木香が配置され腹部の気の巡りの改善に使われている様です。このことから胸部は実しているが腹部や皮膚は虚している状態だと推測できます。なお遠志に関しては使われている処方が少なく推測になりますが、胸部の気の巡りを良くし精神安定に役立つ気剤に属すると考えています。

4)当院でのコロナ後遺症に対しての加味帰脾湯の投与
自分がコロナ後遺症の診断をして治療をするときに柴胡剤を使ったのは300例の内で数例のみで加味帰脾湯を使ったことは一度もありません。コロナ後遺症の殆どは柴胡剤の適応だけでなく黄連剤の適応もあります。とすれば柴胡剤である加味帰脾湯単体でのコロナ後遺症の治療は的が外れている様に考えられます。確かに補剤を使えば一時的に体力は上がったように感じられ患者さんからは「少し良くなった」との言葉も貰えるのかも知れません。しかしながら、次には胃熱が強くなり神経障害や胃炎症状が強くなります。不眠や目眩などの症状が出現しやすく…結果的には症状は悪化していきます。

5)柴胡剤と黄連剤の区別が出来ない医療関係者が多い
この様に漢方の臨床をしていて感じるのは「柴胡剤と黄連剤の区別がつかない医療関係者が多い」ということです。この傾向は昔からで…柴胡剤ばかりを使う反面、黄連剤を使えない医療関係者の姿を思い起こさせます。自分の私見でしかありませんが「柴胡剤と黄連剤の区別がつかないで漢方薬を使っている方が殆どなのでは?」と思わざるを得ません。

胃熱が強く精神不安定で心療内科を紹介した患者さんもいますが当院に戻ってきた患者さんのことです。診察では胃熱が強いのにも関わらず、心療内科で不眠や不安などでの症状での投与なのでしょう。柴胡剤である加味帰脾湯を使われていました。胃熱が強い人に加味帰脾湯を使えば胃熱はより強くなり精神不安定になります。この様な治療が普通に行われている現状を危惧しています。

少なくとも柴胡剤と黄連剤の区別が出来る様になってから漢方薬を投与して頂きたいというのが自分の個人的な希望です。体調が悪いと受診され…また柴胡剤が使われている、ということが異常に多く「本当に漢方診断が出来ているのか?」を考えさせられるケースが多いのが漢方の臨床をしていての実感でもあります。

6)まとめ
自分のクリニックでの漢方治療の臨床をしていると今の環境では、柴胡剤の適応は10~20%で、黄連剤の適応が80~90%になります。柴胡剤と黄連剤の区別が出来ると…この様な割合になると思います。一方で今の現状で柴胡剤を多く使われているころからすれば、柴胡剤と黄連剤の区別がつかないで治療をしてる医療関係者が多いとの結論にもなります。

とても、残念に思います。
最後に、胸脇苦満=柴胡剤、心下痞硬=黄連剤だけの目安では黄連剤は使いこなせない事を追記します。胸脇苦満と心下痞硬の区別が出来れば…柴胡剤と黄連剤の区別は出来るとの傷寒論の解説ですが、現状の人の感性で柴胡剤と黄連剤の区別は出来ないのでは?と思わざるを得ません。昔の人の感性は今の人の数十倍も豊かだったと感じます。今は物がありすぎて本来の人間が持っている感覚で身体を見つめるということが疎かになっていることが原因の様に感じられます。ネットからの情報で「この処方が合っている」と安易に考え投与や自分から服用している姿が今の人の姿です。

ちなみに、自分のクリニックに受診されたコロナ後遺症の患者さんで加味帰脾湯を使った方は一人もおりません。脱毛などの患者さんで胸脇苦満のみという方はいらっしゃいますが、コロナ後遺症で倦怠感を訴える患者さんに胸脇苦満のみという症例はほぼありません。それが臨床を通しての事実です。

2022/11/14更新
2022/11/13更新
2022/11/12更新

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