Menopause通導散の解析

1. 更年期障害の概略 2.更年期障害:骨盤の特異性
3.骨盤の特異性(一般向け) 4.骨盤の特異性(専門家向け)
5.更年期障害の症状と視点 6.当帰芍薬散の解析(更年期)
7.加味逍遙散の解析(更年期) 8.桂枝茯苓丸の解析
9.桃核承気湯の解析 10.通導散の解析
11.症状出現臓器と症状基盤臓器 12.リウマチと骨盤
13.当帰剤への視点 14.駆血剤への視点

通導散の解析

通導散という漢方処方は後世方の処方になります。傷寒論系の処方が2,000年前前後ならば、この様な後世方の処方は1,500年前前後の処方になると思います。

ここで傷寒論処方と後世方の処方を比べて説明してみたいと思います。傷寒論処方は単純で想定される症状を書きながら病期別に区分されていることが凄い処方になります。自分の個人の感想ですが傷寒論処方が理解出来なければ後世方の処方は理解できないと思います。それほど漢方処方においては傷寒論処方が基盤になっていると言えると思います。

(ここの部分は自分の単なる感覚なのですが…傷寒論を書き記した張仲景ってどんな人? 漢方医学に取って傷寒論は基盤になっており、動かすことが出来ない様な重要な書物になっています。でも…なんで自分がこの様なことを皆さんに話さなければならないのか?ということを考えたりします。知人が自分のことを透視者に指摘して貰った時に「自分の天職は漢方らしい」のですが、違和感が大きいのが事実です。でも「分かることは今後の人達のために残したいと思っているだけかな?」という様な大雑把な考えて文字を書いています。)

1.通導散の処方構成

通導散は芒硝・当帰各3.0;枳実・厚朴・陳皮・木通・紅花・蘇木・甘草各2.0;大黄1.0で構成されています。次に、この処方の薬草を気血水の3つに属する薬草に分けます。この処方は駆血剤としての下剤として面白い生活を持っていると感じますが、処方構成と効能に関しては後世方の処方でもあり少し難しい部分があります。

気:厚朴・枳実
血:当帰・紅花・蘇木・大黄
水:陳皮・木通・芒硝
太極:甘草   以上の様に分けられます。

2.通導散の効能解析

通導散の効能を推測してみましょう。

駆血作用
この処方の特性は面白い下腹部の充血の取り方をします。
下腹部の充血を取るのは紅花と蘇木になります。
この紅花で下腹部全体の充血を取って行く方向性があり、蘇木により動かないような血熱を動かし取り去ることが主眼であるように感じます。この2つの駆血剤の作用の強さから当帰を入れて俊敏な駆血作用の緩和を図っていることが面白い部分だと思います。また充血の部分には水分が溜まり易いため木通で充血を取ることでいらなくなった下腹部の水分を外に出そうとしている様です。古方ならば茯苓や沢瀉が使われる部分になります。

下剤作用
これは大黄・芒硝が主に関与していると思われます。
大黄は腸の熱を取り腸に吸収をさせないようにして腸内で便にさせていく感じで、芒硝は乾燥した腸の水分を増やして排便を促している様な感じになると思えます。

気剤作用
俊敏な下剤は臓器間の気の流れを阻害することが多く、その気の流れを保つことを主眼として気剤が使われている様です。陳皮は胃を温める効能があり、枳実は肝臓当たりの上下の気の流れを良くして行きます。厚朴は鳩尾の痞えから喉元への痞えになるため陳皮と一緒になって鳩尾と喉元の気の流れの維持を図っている様な感じだと思います。

3.通導散投与の難しさ
3a. 基本

この通導散ですが後世法ですので、桃核承気湯などに比べて使いやすい部分を持っている様に感じます。その一番は駆血剤を使うときに…生理不順を起こさないか?どうか?を考えながら使います。ピルを飲まれていたりミレーナを入れている方には当てはまりませんが、駆血剤は下腹部の張りを取ることから生理不順を起こしやすくなります。そのため「当帰」が入っていることで生理不順を起こし難くしている所が「通導散」の利点になります。

保険にはないのですが「折衝飲」という処方と似ている部分があります。折衝飲の薬草構成は「桃仁・当帰各4.0;芍薬・桂枝・川芎・牡丹皮各3.0;牛膝・延胡索各2.0;紅花1.0」になります。下剤の薬草が入っていない反面、以外に強い駆血作用を示しそうでありながら「当帰」が入っています。ですので、この折衝飲という処方は「下剤効果がない通導散」の様な処方になり、非常に使える処方に思えます。保険収載して欲しい漢方薬です。

3b. 臨床での違和感

一日3回の通導散を飲まれていた方を診察したことがありますが、下痢が止まらない様になるとのことで転院されて来ました。一方で生理が乱れないということも話していました。駆血しながら生理が乱れないということは、凄い処方にということになります。桂枝茯苓丸などは生理周期や生理量に気を遣いますので当帰を入れた先人の工夫は凄いな!と思います。

折衝飲でも少し位の便秘は駆血作用により取れると思いますので、出来れば折衝飲を使いたいと思います。でも通導散と共に折衝飲があって欲しい様に思います。

4.まとめ

女性に取って下腹部の張りが出ることは毎月、強い方は排卵期と生理前の2回ありますので、普通のことになります。下腹部の張りがあるために生理も起きることになり、お腹が張るときには逆上せ感が強くなりPMS:月経前症候群の様な症状を示すことも多い様です。

PMSは更年期障害ではありませんが、下腹部の張りを少し緩めたり鳩尾の痞えを取ったりすると良くなって行く方が多い様です。この記事は更年期障害の記事ですので、ご要望があればPMSに付いてもページを作り説明していきたいと考えています。

2024/07/11更新

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