Herbal medicine漢方内科治療2

1)漢方・薬草を使った治療 2)漢方から見た病気
3)必要条件を求める漢方医学 4)マクロ視点の漢方医学

2)漢方処方から見た病気の姿

次に、漢方薬の薬草構成から「病気という現象がどの様なものであるのか?」ということを垣間見ることができます。漢方医学は病気に対する視点が非常に素晴らしい面があります。
1.小柴胡湯:少陽病
小柴胡湯は有名で多くの病態を治す漢方処方です。
この小柴胡湯と構成と身体への効力と色々な病態を考えると「病気って…こんな姿を持っているのか?」ということが分かります。

小柴胡湯は7つの薬草から出来ており、柴胡6.0;半夏5.0;生姜4.0;黄芩・人参・大棗各3.0;甘草2.0との構成になります。

次に「気血水理論」により薬草を分けて行きます。
気剤:半夏・大棗
血剤:柴胡・人参
水剤:黄芩・生姜
太極:甘草 ということになります。

加えて、この薬草の組み合わせについて考えます。
半夏+柴胡+黄芩が三つ組で、大棗+人参+生姜がもう一つの三つ組です。
この三つ組の構成薬草の中央に甘草がいます。
この処方から示唆されることは肝臓の鬱血と小腸の虚血を改善する処方になります。
適応する身体はお腹が弱くなり肝臓が鬱血している状態と考えられます。
この小柴胡湯の症状や病気を見てみましょう。
矢数先生の漢方処方解説から抜粋すれば…横隔膜下の肝胆胃部の疾患・頭頸後部疾患・腎臓疾患・生殖器疾患・皮膚病・神経性障害など殆ど全ての症状を出しうる病態ということが理解出来ます。

結論として肝臓の鬱血と小腸の虚血という臓器のアンバランスが基盤となり上記に挙げた色々な症状を出すことを意味しています。身体にも個性があるため症状が多彩なだけです。この様に病気という現象は臓器間のバランスを崩すことにより生まれることが小柴胡湯だけの解析でも考察することができ、漢方処方の解析でも病気の姿は浮かび上がってきます。

2.葛根湯:太陽病
葛根湯からも風邪の病態がどの様なものであるのか確認出来ます。

葛根湯の処方構成は…
葛根湯:葛根5.0;麻黄・大棗各4.0;桂枝・芍薬・生姜各3.0;甘草2.0
ということになります。

これを「気血水理論」で分けて行きます。
気剤:桂枝・大棗
血剤:葛根・芍薬
水剤:麻黄・生姜
太極:甘草

加えて、この薬草の組み合わせについて考えます。
桂枝+葛根+麻黄が三つ組で、大棗+芍薬+生姜がもう一つの三つ組です。
この三つ組の構成薬草の中央に甘草がいます。


この処方も葛根湯の様に堅いカゴメ(三つ組×2)の形をしています。
この処方から示唆されることは表の鬱血と裏の鬱血を改善する処方になります。
これは表裏(皮膚と腸)の身体に対するアンバランスを是正する処方になります。

実際には…小柴胡湯も同じですがカゴメの形をした堅い形を持っている漢方処方は逃げ場所がなく長期的な投与は出来ず一時期しか使えない感覚があります。それより桂枝湯の方が柔軟性があり多くの身体の変化に対応できる処方になると思われます。小柴胡湯ならば四逆散や大柴胡湯の方が逃げ場所があるため安全に長期的に試用できる漢方薬であることを感じます。

この葛根湯の症状や病気を見てみましょう。
矢数先生の漢方処方解説から抜粋すれば…風邪の初期症状・後頚部筋肉痛・上半身の化膿性病変・風邪での胃腸症状など多くの症状を出しうる病態ということが理解出来ます。

皮膚と腸とのアンバランスの力が全身に及ぼしている姿…これが風邪という病態の基本病態です。
医学部では病名しか教えられませんが、この状態になると風邪の症状を現します。
現代医学は病名を決めることを主体として、その病状ができあがる根源の力に対して何の視点も持っていません。つまり身体の基本病態まで認識していないことになります。

3.結論
この二つの漢方処方からの解析でも明らかな通り、病気は臓器間のバランスを崩して発症している姿が浮かび上がってきます。現代医学的な説明にすると…このような臓器間のアンバランスの力が生じて、それを戻そうと身体が反応して代謝の変化が見られることになります。臓器間のマクロ的な力により生化学的変化の様なミクロ的な運動に変化を与えているということです。現代医学はミクロ的な代謝の運動の変化を追いながら、その根源の力を振り返っていません。このため現代医学は対症療法が主体となり根治治療ができない状況になると考える事が出来ます。

このため…身体を一つにして考察しないと「何故?身体の生理学的な変化が生じて病気になるのか?」という根本原因が分からない状態になります。現代医学は素晴らしい医学ですが、この様な点を考察しないことが最大の欠陥でもあります。また漢方医学を現代医学の手法で研究しても無駄です…それは二つの医学の哲学感が正反対であるからに他なりません。

また小柴胡湯の病変において…肝機能障害が現れているという病態に対しては肝臓のみに注視して治療しても治ることはなく、腸に視点を置かないとならないことになります。症状を示す臓器の治療だけでは根治治療は出来ないと漢方医学が指摘しています。

2023/09/06更新
2022/11/09更新
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