麦門冬湯の解釈
麦門冬湯を知りたい方が多くいらしている様ですので…
麦門冬湯の漢方的な性格について記事にします。
1)麦門冬湯の構成と理論的効能
まず最初に見るのは処方の構成です。
麦門冬湯の構成は…麦門冬10.0;半夏・粳米各5.0;大棗3.0;人参・甘草各2.0
これが何を意味しているのか?ということが分かれば使い方は簡単です。
気剤:半夏・大棗
水剤:麦門冬
血剤:人参・硬米
太極:甘草 の様な構成になります。
この処方は腸を温め胸を潤し冷やし胸腹バランスを取ることを主眼としています。
半夏が胃の気剤、大棗が腸の気剤です。
大棗を軸に腸を温めるために、人参に栄養を付ける硬米(玄米)まで入っています。
また麦門冬は胸に水分を移動させて胸の熱を減弱させる効果があります。
半夏は胃の当たりの気剤で腹胸バランスを取る軸の役目をしてる様です。
これによって咳を抑えようとする漢方処方です。
また麦門冬湯から教えられることは胸とお腹の運動は連動しているということです。
お腹と胸は、同じ熱量を持とうと運動している一方で、お腹の力が下がっても、胸郭に囲まれた胸部の熱量は変わりません。この運動の是正をするのが麦門冬湯であり、身体のマクロ的な運動が垣間見られると思います。病気は、この様に起きています。
と、すれば麦門冬湯の処方意味は簡単です。
お腹がペッタンコで…空咳が強い患者さん用の処方です。
この処方がよく使われたのは、結核の末期だと考えられます。
食事が取れず…咳も治まらない。そんなときに使う処方です。
2)病期:厥陰病に近い太陰病
この麦門冬湯の病期ということに関しては…結核で喀血をして体力が低下し食欲が無くなり咳も続いている状態です。とすれば、この麦門冬湯は厥陰病(死に近い状況)での裏虚が強い太陰病になると思われます。できれば…このように処方を構成している薬草をみて漢方処方を性格を感じることが重要です。自分の感覚としては9割方の漢方薬を扱う医療関係者には…この様な感覚を持たないで投薬している様に感じています。風邪の中盤からの咳に麦門冬湯を投与しても無駄です…この頃は少陽病になっている筈です。他のクリニックで咳で麦門冬湯を投与している例を見ると愕然とするのですが「咳=麦門冬湯の公式は間違いであること」を理解して頂きたいと思います。
3)コロナ後遺症と麦門冬湯
麦門冬湯は悪くない処方だと思いますが、コロナ後遺症や今の一般の人達の身体は殆どは少陽病です。ですから、麦門冬湯を使うならば少陽熱を取りながらの麦門冬湯なら良い感じなのでは?と思います。
ちなみに竹ジョ温胆湯が麦門冬湯に基本として少陽熱を取る柴胡や黄連が入っています。このことからコロナ後遺症では麦門冬湯は使えないけど、竹ジョ温胆湯はコロナ後遺症に使える漢方処方になると思います。但し…柴胡剤と黄連剤の区別に加えて、竹ジョ温胆湯と柴陥湯などの区別が出来ることが必須になります。
麦門冬湯だけを処方され…鎮咳薬と併用している方も多い様ですが、これではコロナ後遺症の咳は治らないことは明白です。何故? この様な適当な漢方治療が行われているのか? 漢方薬は症状投与では効かない…身体に適合した漢方薬を選べる医師がやけに少ないことに疑念を抱いています。
2023/09/20更新
2022/09/28