Menopause更年期障害:概略

1. 更年期障害の概略 2.更年期障害:骨盤の特異性
3.骨盤の特異性(一般向け) 4.骨盤の特異性(専門家向け)
5.更年期障害の症状と視点 6.当帰芍薬散の解析(更年期)
7.加味逍遙散の解析(更年期) 8.桂枝茯苓丸の解析
9.桃核承気湯の解析 10.通導散の解析
11.症状出現臓器と症状基盤臓器 12.リウマチと骨盤
13.当帰剤への視点 14.駆血剤への視点

概略

更年期障害に関しては色々なサイトなどで説明をされていますので、基本的な説明は他のサイトに譲ります。内科臨床医が漢方治療を通して感じたことを話して行こうと思います。ちなみに医学部にいた頃に産婦人科の授業がありますが、最初に黒板に書かれ教えられたことが2つあります。一つ目は「女性は波動する」、二つ目は「女性を診たら妊娠と思え」と言うことでした。今になって振り返れば重要なことを最初に教えられたと感じます。

1.生理という現象

女性の生理は小学生高学年から中学生にかけて初潮を迎え生理が始まります。20才程度までは不安定な生理であることが多く、安定した生理になるのは25才以降になる様に感じます。そして40才程度から生理が強くなり45才程度からは不順になって行き、50才前後で生理が終わり閉経するのが一般的です。ホルモンであるFSH・LH・エストロゲン・プロゲステロンなどの変化などは他のサイトの説明を参考にされて下さい。wikipedia(月経)などの詳しい説明を参考にされて下さい。

この生理という現象は女性に取ってはとても大切なもので、生理という波の様な現象は女性としての性格形成などにも大きな影響がある様に感じます。加えて女性の病気にも生理が大きく関わることが多く、内科医である私が漢方医学的に診察する時には「生理周期や生理期間」などを聞き生理の状態をお聞きすることが多いのが私の診察では普通なことです。普通の内科医師では聞かないことが普通なのはご承知の通りです。
よくよく考えて見ると不思議な現象です。
28日周期が基本の生理は…最初の2週間後に排卵期になり、その2週間後に月経になります。上の図で示した様に波になっています。女性には当たり前のことなのかも知れませんが自分には不思議な現象に思えます。内科医として感じる女性の下腹部の変化は下の図のようになります。

内科医ですので…この様な単純な現象と取り上げて数学的な解析の基礎にします。
生理前の女性の下腹部は張りが強くなります…それにより、もちろん便秘傾向にもなります。また顔や下肢が浮腫みます。それが生理になり出血することで下腹部の張りが弱くなって行き生理前の症状が取れていきます。別の言葉で表現すると女性の下腹部は「充血」と「虚血」を繰り返している姿に他なりません。この視点が「生理と関係する病気という現象の解析への扉」なのです。

2.更年期の状態
更年期は閉経前後5年程度とされておりますが、閉経前と閉経後の身体に状態がどの様な変化になるのかを解析していきましょう。50才を閉経として45才~50才が閉経前、50才~55才が閉経後ということになります。

2a) 閉経前
経験的には閉経は52~53才程度が多い様な印象を受けますが、ここでは仮に閉経が50才としてみると、閉経前5年は45才程度からになります。この頃からの変化は生理周期の変化や生理量の変化などが多い様です。

生理周期の変化
多くの閉経前の方に現れる現象の一つは生理周期の遅延や不順です。生理をサインカーブにしていると女性の方に怒られそうですが、生理は波ですので数学的にはこの様な表現になります。

さて次は生理遅延による下腹部の充血度を推測してみます。
臨床的に症状がある患者さんの下腹部の充血度は以下の様になると推測されます。下の上図は更年期前の生理の状態、また下図は更年期に入って来た生理の状態の一つです。

生理周期が長くなって1回毎の生理で充血が取り切ることができず徐々に下腹部の張りが強くなって来ると不正出血や過多月経となることが多くなります。一方で充血=虚血の状態を保ちながら徐々に閉経に向かっていく場合もありますが、この場合には生理周期は余り乱れずに生理量が徐々に現象していく傾向になるのが普通です。

2b) 閉経後
次は閉経後の変化です。生理が止まっても女性ホルモンが完全になくなる状況ではないことから徐々に下腹部の充血がみられる方が多い様に感じます。

数学的な変化として捉えており不自然な部分もありますが、徐々にホルモンが少なくなり生理がなくなる状況である閉経の状態の数学的図式です。

さて…閉経後にその波が全くなくなるか?と言えば少なからず残っている場合が殆どの患者さんの臨床をしていて感じることです。それは…閉経後でも下腹部が生理前の様に張ることが頻繁に起きているという事実です。

上記の図の様に閉経後でも生理を引き起こすだけのホルモン量はない状態とは言え、ホルモンが全て身体からなくなる訳ではなく微量ながら流れています。このため生理は訪れず徐々に下腹部が張っていく現象が現れます。この状態が閉経後に良く見られる更年期の身体の変化で、この状態が次に病気を引き起こすことが頻繁に起きるという現象へ繋がることになります。多くの場合にはホットフラッシュなどが起きることが有名です。

2c) 子宮卵巣摘出後
これはとても不思議なことなのですが…子宮卵巣摘出後においても閉経後の様な変化が現れるということを実際の臨床で確認しています。

子宮卵巣摘出しても臍部下部の両側(卵巣が張る場所)が張っていることが多く、そこに臓器がないのに下腹部が張るという現象が起きることがごく普通にあります。これは不思議ですが、現実に、この様な子宮卵巣がない状態での下腹部の張りが起こり、次に病気を引き起こしている姿を多く見受けます。臓器を取っても身体は子宮卵巣があったことを覚えていると推測されます…このことから「臓器を取ればそれで治る」という考えは自然に淘汰されていく様に思います。

2024/06/21更新
院長:杉

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